森栄樹×命を感じる時間

ドワンゴ代表取締役副社長を経て独立。近未来を感じさせる家電商品を開発しているアノドスで、
現代表を務めている森栄樹氏。一時代を築いた森氏を表舞台で見かけなくなって数年が経った。
――その謎に包まれる現在の私生活とは?

――今の生きがいとは――

生きがいっていうとちょっと重くなってしまいますが、なんとなく順を追って説明していきますかね。
20年前、僕はソフトウエアのエンジニアだったんですけども、そのときに出会った友達と一緒に会社を立ちあげて、 仕事を受注したり、一緒に何か作って一般の方々に届けたりとかしていたんです。 具体的に言うと、ドワンゴという会社でオンラインゲームを作ったり、着メロのサービスをやったりしていたんですね。 で、なんか知らないけど、わりと上手くいって、会社を起こしてから10年後くらいに、 なんとなく辞めてもいいような雰囲気になったんですよ。

 

 

ここぞとばかりに会社を辞めた

ここぞとばかりに辞めさせてもらって、それまではできなかった、もっとやりたいことをやろうと思ったんです。
今までは形のないサービスばかりでしたが、もっと形のあるものが作りたいとずっと思っていたので会社を作りました。 それがアノドスという会社で、ハードウエア、いわゆる家電みたいなものを作っていこうと思って。 ただ、今まで培ってきた強みも組み込みたかったので、オンラインゲームサービスとかと結び着くような家電を作ってみようと 思って企画していました。なかなか面白いかなぁと思って。
それに共感してくれる仲間もけっこういて、世の中を圧倒させるような商品を作りたいと思ってやってました。 その時はたまたま前の会社が成功して資金があったので、自己資金だけでやっていました。

 

 

10年前は
――クリアに、仕事が生きがい――

10年前にやっていたこと、とにかく形のあるものが作りたかったということが、生きがいに直結していましたね。 お金が回るように広げて行って、より規模の大きいものを作っていきたいという気持ちでやっていました。

 

でも、やってて思ったのは、世の中に製品として出してしまうと、それを出した責任っていうのがあるということ。 例えば修理を受け付けなければいけないとか。部品を何年間も持っておかなければいけないとか。サポート窓口を作ってどうしましょうとか。 物を作るだけじゃないところも非常に大事だと感じました。だけどやっぱり難しい。

 

 

だからやらなかった
――縛られるのが嫌だから――

そうこうしている間に、新しいものが作れないっていうタイミングも出てきたんですね。 技術というのは世の中とともに進むとは限らなくて……。世の中の進歩を待たなければいけないとか。 今これを出しても全く受け入れられないとか。
自分の会社は他で収入を得るという柱が無くて、それでも従業員を抱えているという状態だったので、 会社自体もういいかなって思ったのが数年前です。
世に出さなかった商品をもし今出したらいい感じになるかもしれないけど、今の僕にその情熱がなくなってしまったので、 誰か出してくれたらいいなって感じですね。

 

 

趣味のマラソンに没頭
――街の発明家にはなれない――

無理して仕事をするのもナンだなと思い、人生長いんだし・・・と思って、 僕の趣味であったマラソンとかに時間を費やすようになっていった結果、 今は全く仕事をせずに生活するようになってしまったという。これが現状です。 もしかしたら街の発明家みたいな感じでやれていたらよかったのかもしれません笑
物を作るには“部品”が必要なんですよ。最先端の部品を取り扱っているところに、 街の発明家みたいな人が行っても売ってくれないんですね。すごく細かく事業内容とか聞かれて判断されるんです。 あなたに我々の部品を売ったらどんなものが発明されて、どのようにメディアに売り込んで、どのように収益が回りますか?  結果的に我々に利益をもたらしてくれるんですよね? って。

 

 

現在の生きがい
――命の危機を感じる瞬間――

一番力を入れていることは“アドベンチャーレース”です。 いろんなスポーツをしながらゴールを目指す競技です。山登ったり、船漕いだり、 泳いだり、崖を降りたり、マウンテンバイク乗ったりとか、基本的には3日間以上、チームも組んでっていう感じです。 一番ホットなのはニュージーランドで、日本で行われるものとはスケールが桁違いですね。

 

 

死ぬかと思った! を体験するために参戦
――生きがいというか夢中――

「ファイトー!」――多摩川の御岳渓谷でのレース――

 

過酷で、難易度がめちゃくちゃ高い。崖から落ちたら死にますしね。 臨死経験って、そうそうないでしょう? ヒリヒリする感覚、駆り立てられるものがあるというのが、 魅力ですね。生きがいというか、もう夢中です。死ぬ気でがんばらないと死んじゃうかもしれないから笑

 

 

「いっぱーつ!」――群馬県みなかみ町でのレース――

 

他のチームメンバーは仕事してるんですけど、僕はしていないので、 できるだけメンバーの負担が少なくなるように色々準備したりスケジュールを組んだりとしていますね。 タイムで競う競技ではあるんですけど、身体能力や歴史にも左右されてしまうので、 僕らのチームは走りきれるかどうかというところですね。やっぱり海外の選手は強敵ばかりですが、 日本にもすごい選手はたくさんいるので頑張って欲しいと思っています。

 

 

―――現状はこんな感じです。大丈夫ですかね笑

 

森栄樹(もり・ひでき)
1968年生まれ。日本大学理工学部物理学科卒。
在学中、フリーソフトゲーム制作集団「Bio_100%」を結成。
卒業後、NTTデータ通信株式会社に入社。
通信ソフトの研究開発などにたずさわる。
1995年12月、マイクロソフト株式会社に入社。
ゲームテクノロジー “DirectX” のエバンジェリストとなる。
1998年10月、株式会社ドワンゴに開発部長として入社。
2000年9月、同社代表取締役副社長に就任。
2008年1月より株式会社アノドス 代表取締役社長。

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